青梅クラフト館 手作りの道具展

お蕎麦の道具として徳利、蕎麦猪口などを出品しています。
image007.jpg

青梅クラフト館 手作りの道具展

2007年7月1日〜15日

〒198-0063 東京都青梅市梅郷2-177
tel 0428-76-0609
JR青梅駅前から吉野梅林行きバスにて下郷下車 徒歩1分

染付のうつわライン

食の記憶 1 ーにぎりずしー

うつわは料理を盛るためにあるもの。私が器作りを始めたのも、美味しいもの好きだということが大きいかもしれません。そのせいか、何でもすぐに忘れてしまうくせに、美味しかったことだけは、執念深く覚えているのです。特に、幼い頃初めて食べて美味しかったときの感動は、心に鮮烈に印象づけられています。そんな「食の記憶」を、色々な思い出もまじえて、書き綴ってみたいと思います。 

ーにぎりずしー
日本料理の中でも、特にシンプルで、素材の味を生かした他国に類を見ない、すばらしい料理、すし。ネタの新鮮さは勿論ですが、酢飯の酢加減、握り具合、すべてのバランスが整ってこそ、うまいすしとなるのでしょう。とはいえ、私自身は、懐具合の関係上、すしを語れるほどは食べられず、説得力のあることは言えないので、ぼろが出る前にこの辺で止めておきます。私が初めてちゃんとしたにぎりずしを食べたのは、確か小学校2,3年の頃で、それまでは手巻きずし専門でした。一番の気に入りはイクラ。小食だった私は、一、二本食べればお腹いっぱいでした。大人がにぎりずしを美味しそうに食べていても、特に食べてみたいとも思わず、なぜか子供は手巻き、にぎりは大人のもの、と思いこんでいたようです。ぷちぷちとした、オレンジ色のいくらの手巻きずしで大満足だったのです。ある時、祖父母と両親と兄とで、神田にある美味しいすし屋に行きました。カウンターだけのうなぎの寝床の様な小さな店でした。私は気に入りのイクラの手巻きを食べながら、板さんがリズム良くすしを握るのをぼーっと見ていました。祖父がふと、「まいこ、お前も食べてみろ」と、自分のまぐろのすしを、わさびをぬぐい取って私に差し出しました。ちょっとおっかなびっくり、どきどきしながら口にいれてみました。初めて食べるまぐろのにぎり。それはびっくりするほど美味しかったのです。何で今まで手巻きずしばかりしか食べていなかったのだろう・・・。私にとって、初めての大人の味でした。両親は、内心しまった・・・と思っていたかもしれませんが。その後、神田にある、その店とは別の、でかネタで評判の寿司屋に母と行きましたが、初めて食べたまぐろの鮮烈な美味しさにはかないませんでした。初めての強烈さもあるでしょうが、良いお寿司屋さんだったのでしょう。

blog-s01.jpg
私にまぐろのにぎりを教えてくれた祖父は、私が小学校5年生の冬、東京に大雪の降った日に癌で亡くなりました。いつも面白いことばかり言って、私たちを笑わせてくれた優しい祖父が大好きでした。にもかかわらず、訃報を聞いたときは、涙ひとつ出ず、病院で遺体に対面したときも、目をつぶり、痩せて、人形のように横たわっている祖父が、いつものおちゃらけた祖父と余りにも違っていて、今ひとつ実感がわきませんでした。悲しみの雰囲気の中、いま一つぴんとこない自分が、何だか自分が薄情者に思えました。誰かが用意してくれていた出前のおすしを、お腹が空いただろうからと、親戚が勧めてくれました。さすがに、皆ものを食べる気にはならなかったようで、殆ど残っていました。私も余り気は進みませんでしたが、悪い気がして、その置きっぱなしで少し乾いた感じのする寿司の中から一番無難そうな卵を手に取りました。口に入れ、卵の甘みを感じた瞬間でした。何の前触れもなく、急に嗚咽がこみ上げてきました。涙で目の前がぼやけて病室が水の中のようになりました。こみあげる嗚咽で、口の中の卵寿司を噛飲み込むこともできず、吐き出すこともできず、にっちもさっちもいかない状態になってしまいました。しばらくそんなふうに、口をぐちゃぐちゃしながら、格好悪く泣いていたのでした。何かものを食べることによって、私の中で現実感が増したのか、ほっとしたのかよく分かりませんが、食べることは、空腹を満たしたり、味わう楽しみいがいにも、人間に不思議な作用をするようです。
染付のうつわライン
Handmade functional pottery by Maiko Miyaoka © 2005-08 by Movable Type