食の記憶 3 ー蜂蜜漬けのそうめんー

大学生の頃、アラビアンナイトを読んでいたとき、数多い物語の中の、ひとつの物語登場人物のセリフに目が点になりました。それは、アラジンと魔法のランプのような有名な物語ではなく、話の内容もよく思い出せないのですが、その物語の中のある貧しいおばあさんが、切なくつぶやいたことばでした。「わたしゃ一度でいいから蜂蜜漬けのそうめんがたべたいよう」(このセリフも記憶が確かなものではありませんが。)そうめん?あの夏に食べるつるつると冷たい麺が蜂蜜に・・・。葛きりのようなものだろうか。気になりつつも、特に調べることもしませんでした。

blog-s03.jpg
何年後かに、大学卒業旅行として、仲の良かった友達と二人で、トルコに旅行に行きました。一ヶ月くらいかけて、トルコをぐるっとまわる旅です。イスタンブールから入って、地中海のリゾート地や、きのこの形の巨岩で有名なカッパドキアを観光して、東のほう、シリアに近いシャンルウルファという、エキゾチックな響きの名前の古い町にたどり着きました。ウルファには美しいモスクと、迷路のような面白いバザールがあります。シリアに近いので、ヨーロッパ側のイスタンブールとは雰囲気が異なり、アラブ色が濃く、黒い衣装にすっぽりと身を隠したイスラムの女性をよく見かけました。街を歩いていたとき、旅の相棒、大の甘いもの好きKの甘党アンテナにひっかかったお店がありました。そこは、カダユフというデザートの専門店でした。中に入り注文すると、金属の薄くて丸い皿に入った、麺の細いかた焼きそばみたいなものが出てきました。フォークで崩して口にすると、ほんわかと温かく、パリパリとした麺に、トロッとチーズがはさまっていて、全体が濃厚な蜜に浸り、ぐぐっとくる甘さ。この麺のお菓子、これはまさしく、あの切なくなるほどおばあさんが食べたいと願ったお菓子、「蜂蜜漬け素麺」ではないか・・・。麺の細さもまさに素麺そのもの。ボリューム感があり、パワフルな甘さなので、半分くらい甘党隊長Kに食べてもらいましたが、とても香ばしく美味しいものでした。トルコで食べたので、アラビアンナイトとは少し違うかもしれませんが、アラブ色の強い街であることを考えると、「蜂蜜漬けそうめん」は、こんな感じのお菓子であると思われます。
 トルコでは、他でも色々なお菓子を食べました。気に入ったのは、アシュレというナッツと麦のお汁粉のようなものと、スゥトラッチというライスプディング。アシュレは、ナッツ好きの私としては、たまらない一品。スゥトラッチは、米の粒々は無く、トロリとクリーミー。上が少し焦がしてあって、これがまた美味しい。アラビアンナイトのおあばさんではないけれど、「わたしゃ蜂蜜漬けも素麺とアシュレとスゥトラッチがもう一度たべたいよう・・・。」

染付のうつわライン
Handmade functional pottery by Maiko Miyaoka © 2005-08 by Movable Type